「あの、ここって……?」

目的地を知らされぬまま、バイクで移動すること20分。

連れてこられた先は若者が多く集まる繁華街だった。


「今日の仕事場」

仕事場?

普通の繁華街にしか見えないけど、この辺りに怜央の仲間たちがいるのだろうか。

「誰かと合流するの?」

バイクを停める怜央の隣で、乱れた髪を整えながら問う。


「しねぇよ」


「じゃあ、何しに来たの。昨日、仕事内容は俺のそばにいることって言ってたけど具体的には?」


暴走族が普段どういう活動をしていて、どこに集まるのか。

姫には何を求めているのか。

私はまだ何も聞かされていない。


「言葉どおりだ。特に何かする必要はねぇよ。俺のそばにいれば周りが勝手に瑠佳のことを認知するからな。そのためにここへ来た」

そうか、私の役割は櫻子さんの代わりに敵チームのターゲットになること。

そのためにまずは、私が姫であることを周囲に知ってもらわなきゃいけないんだ。

確かに繁華街なら人も多く、敵のチームがいる可能性も高い。

認知してもらうという意味では最適な場所なのかもしれない。