寝室に戻るや否や、怜央はベッドの上に私を座らせた。
怜央は隣ではなく床に腰を下ろすと、膝の上に置いていた私の手を優しく包み込む。
そして、彼は私の顔を見上げると、真剣な面持ちで話し始めた。
「あのさ、この仕事辞めるか?」
「へ……?何、言ってるの?」
「傷ひとつ、つけさせねぇ。俺はその約束を守れなかった。だから、瑠佳が辞めたいっていうのなら……」
「守れなかったってどういうこと?私、傷なんてひとつもないけど」
「傷っていうのは体だけじゃない。心にも負うもんだ」
「幻聴のことなら心配しなくても大丈夫だよ。今はもうなんともないし」
「“今は“だろ?」
「今日のはたまたまだって。きっと疲れてただけだよ」
私が「平気だよ」と言って笑ってみせると、彼はいつもよりも低めの声で私の名前を呼んだ。
「瑠佳、俺は……」
「な、何……怜央は私に姫を辞めてほしいってこと?」



