「寄るっつーか、今日は帰す気ねぇよ」

「帰す気ないってどういうこと……?」

「うちに泊まってけ」

「な、何言ってるの?無理だよ。志貴を一人になんてできない」

「弟のことなら真宙と冬馬に任せてある」

そういえば怜央は真宙くんに帰り際、何かを伝えていた。

「でも、」

「このまま帰したくねぇんだよ。瑠佳のことだから、弟の前では気丈に振る舞うだろ?」

確かに怜央の言うとおりだ。

私はこのまま家に帰れば何事もなかったかのように、いつもと変わらない笑顔を浮かべるだろう。

だけど、それのどこがいけないのかわからなかった。



「今日は自分のことだけを考えろ」

自分のことだけを考えろ……か。

「わかった」

そう返事はしたけれど、自分のことだけを考えるなんてやっぱり無理だ。

志貴が心配でたまらない。

少しだけお邪魔したら帰ろう。

そう思った矢先、志貴から一通のメッセージが届いた。

《真宙さんと冬馬さんって人が家に来た。俺が一人だから泊まっていくって。姉ちゃんも風邪には気をつけろよ》