私は昨日、悪魔のように恐れられている暴走族総長の笑顔を見た。

そして現在(いま)、天使のような親友は私の前で鬼の形相を浮かべている。



「瑠佳ちゃん、私はまだ完全に納得したわけじゃないからね。暴走族の姫(小声)なんて」

「わ、わかってるよ、新那」


新しいバイトが決まったことは昨日、5限目が終了した直後、真っ先に新那へと伝えた。

彼女との出会いは小学4年生の頃。

私が通っていた学校に新那が転校してきたのがきっかけだった。

それからもう7年の付き合いになるが、こんなにも怖い顔をする新那を見るのは今日が初めてだ。

暴走族の姫なんていう特殊なバイトをすんなり受け入れてくれる親友など、なかなかいないだろう。

帰宅後には『考え直したほうがいいよ』というメッセージが届き、今日も休み時間のたびに『暴走族の元でバイトするなんて危ないよ。今からでも断れない?』と繰り返し訴えられた。

心配性な新那のことだ。話せば必ず反対する。

私はそれをわかった上で全てを話した。