「いいから大人しくしてろ」
本日、2度目の“大人しくしてろ”。
……確かに、今日の私は落ち着きがないのかもしれない。
その原因は誰かさんが私を軽々と持ち上げたせいなんだけど。
冷え切っていた体は、さっきからずっと熱を持ったままだ。
「ごめん、ありがとう」
「ん」
20段ほどある階段の一番下まで転がり落ちたローファー。
それを片手に戻って来た怜央は「……ったく、世話が焼ける姫だな」と口にするともう一度、目の前で跪き、私の足にスポリとローファーを履かせた。
その姿はまるでシンデレラにガラスの靴を履かせる王子様のようで、一瞬自分がヒロインだと勘違いしてしまいそうになった。
……こんな乙女チックな妄想をするなんて私らしくない。
「そこまでしなくても良かったのに」
「ついでだよ、ついで。つっても、瑠佳以外にはしねぇけど」
「…………えっ?ああ、姫だもんね。私は」
自分のことを“姫”だなんて口にできるのは、私がそれを役職だと思っているから。
「それもあるけど、瑠佳は……」
怜央が私の名前を呼んだ時、猛獣が鳴いた。
ぐぅおお〜〜〜〜〜〜と。
……………………私のお腹の中で。



