「……それでも、ありがと」
「礼ならさっき聞いた。それよりも、さっさと手動かせよ。こっちはもう終わったぞ。あ、なんなら靴下も履かせましょうかお姫様?」
冗談めいた口調ではあるが、彼の視線は置いてあった靴下へと向けられている。
「け、結構です!」
私は慌ててそれを手に取り死守した。
ちんたらしていると、本当に靴下まで履かせられてしまう。
そんな危機感を抱いた私は猛スピードで顔と髪にタオルを押し付けた。
今はキューティクルなんて二の次だ。
その勢いのまま靴下を履き、ローファーに手を伸ばす。
…………が、こういう時に限ってミスは起こる。
「あっ、」
無理な姿勢で手を伸ばしたせいか、掴みそこねた片方のローファーがコロコロと階段を下っていった。
「あー……」
「拾ってくるから待ってろ」
「え、いいよ。私、今なら片足で取りに行けるし」
幸いにも、もう片方のローファーは無事だ。



