「でも、」
「つーか、瑠佳は先に顔と髪拭いとけよ。風邪引くぞ」
そうだった。濡れていたのは足だけではなかった。
顔を海水につけたことにより濡れたサイドの毛。
そこからポタポタと落ちる水滴のせいでブラウスにはいくつもの染みができている。
「これ使えよ」
「……むっ」
顔に押し付けられたのは、さっきまで怜央の鞄の上に置いてあったタオル。
白くて、ふわふわとしていて、うちのとは違う柔軟剤の香りがする。
至り尽くせりとは、こういうことを言うのだろうか。
「……タオルありがとう。あと、言い忘れてたけど、ここまで運んでくれたことも」
「礼を言われるようなことはしてねーよ。瑠佳が困ってたら助ける。当たり前のことだろ」
いつもとは逆。今日は怜央が私を見上げながら言う。
それがなんだか新鮮で、また胸が鳴る。
風に揺れる銀色の髪に思わず手を伸ばしそうになったのは私だけの秘密。



