【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。



「新那、すぐ戻ってくるから」

「うん」


覚悟を決めた私は、恐る恐る怜央の首へと腕を回す。


……ち…………近くない!?


さっきよりもぐっと縮まった距離に、わかりやすく反応する心臓。

バクバクと鳴るその鼓動は、今にも彼へと届いてしまいそうだ。

お、落ち着け私。視界に映るのが怜央の首筋っていうのも良くないんだ。

そう思って瞼を閉じると、今度は嗅覚が仕事を始める。

鼻をかすめたのは怜央が愛用しているであろう香水の匂い。

匂いっていうものは厄介で、他の記憶まで呼び起こしてしまう。

そう、あの日ボウリング場で唇が触れ合いそうなほど近づいた時のこと──。

だめだ、こんな状況で平静を保つなんて無理。 

怜央に触れられている箇所だって、熱くて、熱くてたまらない。

こんなのはただの救助の一環なのに……!!


「やけに静かだな?」

「うぇ!?」

「うぇってお前……」

「だ、だって急に話しかけてくるから」

それに、普段よりも近い距離で怜央の声が聞こえてくるんだもん。