「ごちそうさまでした!」

4限目終了のチャイムが鳴ってから、わずか5分。

特大おにぎり2つをぺろりと完食した私、水瀬 瑠佳(みなせ るか)は蛍光ペン片手に求人誌へとかじりつく。

「ここは時給970円。こっちは時給高めだけど土日祝日、全部入らなきゃだめか……」


求人誌を読むのは教科書を読むよりも得意だ。

募集内容を見ながら好条件のものには丸をつける。


ちなみに私にとっての好条件とは高収入であること。

シフトに融通が聞けば尚良。

「瑠佳ちゃんまたバイト始めるの?」

そう問いかけてきたのは、前の席で顔よりも大きいサイズのメロンパンを頬張る|小川 新那(おがわ にいな)
見た目も中身も可愛い私の親友だ。

首を傾げる仕草と同時に揺れたミルクティー色の髪には、今日も綺麗にウェーブがかかっている。


「居酒屋の方が来月閉店するの。だから、早急に代わりのバイトを見つけたくて」

わざわざ“居酒屋の方”と説明したのは、他にスーパーのバイトも掛け持ちしているからだ。