『萌々、覚えとけ。次に会った時、俺はお前の全てを貰うからな』

「ッ!」



今、はっきりと分かる。

皇羽さんは、いつどんな時でも、本気なんだって。



「せ…、せいぜい逃げられないよう、捕まえといてくださいね…っ」

『おーおー、逞しいねぇ俺の萌々は』



「まだあなた物じゃありませんッ」

『お前なぁ…』



その後――皇羽さんと他愛ない通話が終わって、一人静かに部屋にいる。


だけど胸の高鳴りは一向に消えなくて…。ずっとドクドクとうるさく唸って、体を揺らす。



「左手…薬指…」



思わず、指を見る。まだ何もはまってない指を、じっと眺めた。



「…皇羽さん……っ」



ただ指を見ているだけなのに、嬉しくて、泣きたくて仕方なくて…。


誰もいないのをいいことに、皇羽さんの部屋に入って大きな声で泣いた。夜が来ても、ずっと。


だからか――その時の私は、気づかなかった。


さっき玲央さんが渡してくれた鍵が、この部屋にある「とある鍵穴」にピッタリはまるという事を。