「違うんだ、萌々。落ち着け、聞け」
「い、や……ちょっと、無理です…‼」
私にゆらりと近づいた皇羽さん。おずおずと伸ばされた手は、真っすぐ私にむかってきた。
けど――
パシッ
私は、その手を勢いよく叩く。
「私、この世の中に一つだけ嫌いな物があって…」
「嫌いな物?」
コクンと頷く私を、皇羽さんは黙って見た。
テレビの中では、キラキラした笑顔を浮かべて歌って踊っているレオ…皇羽さんがいる。
その姿を見て、熱狂するファン――私もそうであったら、どんなに良かっただろう。
「皇羽さん…ごめんなさい」
私は――
「 Ign:s が大嫌いなんです…!」
「……」
皇羽さんは無言だった。十秒ほど目を瞑って「考える人」のポーズをとる。
だけど――しばらくして、やっと私の言葉を理解したのか。ゆっくり目を開いた。
そして、
「……マジで?」
今までで一番。
間の抜けた声を、出したのでした。



