氷の王子さまは、花のような魔女に永遠の恋をする。

わたしは、精霊さんと過ごす時間がとても楽しかった。

そういうと、精霊さんはうれしそうに、花が咲くように。

とても綺麗に、無邪気に笑った。

それから、エヴァはわたしと一緒に過ごしてくれるようになった。

エヴァとの出会いを思い出して、わたしはしみじみと実感する。

エヴァは、あの時からずっと一緒にいてくれたんだ。

ほっこりとしたあたたかい気持ちになって、わたしはエヴァに笑顔を向けた。


「そっか、名前わたしがつけたんだったね」

『......やっぱり忘れてたのね』


エヴァは、どこか寂しそうにそう言った。


『......私は、ずっと覚えてたよ。あの日から、ずっと......』


でもさっきとは一変して、嬉しそうに笑うエヴァを見て、わたしは思う。

確かに名前を誰がつけてたかは、忘れてたけど。

でも、なんでそういう名前にしていたかは覚えてるんだ。あの日から、エヴァと同じで、ずっと。


「そういえば、なんだけど......」

「フィア」


精霊さんの名前を、エヴァ・オリビアにした理由を言おうと口を開く。

最後までいうことができずにその言葉は遮られた。

凛とした、背筋がシャキッと伸びてしまうような声。

エヴァの声じゃないその声に、わたしは肩をこわばらせた。

笑顔を取り繕って、姿勢を正し、言葉を返す。


「お母様、なんでしょうか」

「ヒメル・シャンドレイン」

「ぇ......」


そう言われた誰かの名前に動揺して、わずかな声を漏らした。


「すぐに用意して、応接間に来なさい」