氷の王子さまは、花のような魔女に永遠の恋をする。

うなずいた精霊さんに、わたしは次々と質問をした。

このころ、とても魔法が大好きだったわたしは、もっと魔法に興味を持つようになって、さらに魔法が大好きになった。

そうした後、微笑んでいる精霊さんに、ある質問をした。


「ねぇ、名前なんて言うの?」

『え?』

「名前、おしえてよ」

『......』


名前を聞かれたことが、照れたのかうれしかったのか少し顔を赤らめて、でもとっても言いにくそうにする精霊さん。

やがて、精霊さんは小さくささやくように言った。


『......ないの』

「えっ?」

『......名前が、ないの』

「そうなんだ......」


精霊さんには、名前がないみたいだった。

童話とか神話で出てくる精霊も、きっとわたしたち人がつけたものだろう。

誰かから名前をもらうということはなかったんじゃないのか。

童話とか神話で出てくる精霊は、ちゃんと名前がある。

でも、この精霊さんには......。

わたしは、口を閉ざした。

沈黙があたりを包む。


『......ごめんなさい。せっかく、聞いてくれたのに......』

「......」


沈黙を破ったのは、精霊さんの声だった。

精霊さんが悲しそうに、申し訳なさそうにそう言って、胸が詰まった。


「......エヴァ」

『......えっ......』

「名前、つけてあげる」

『......っ』

「あなたは、エヴァ・オリビアね!」