氷の王子さまは、花のような魔女に永遠の恋をする。

小さいころから、私は本が大好きだった。

特に、意味も内容に放り出されている魔導書。

わたしが今いる(幽閉されている)この誰も寄り付かない屋敷は、幽霊屋敷、邪悪屋敷と呼ばれていた。

ひとりぼっちの中で、わたしは持ち主の失った本を何度も何度も読んだ。

幸いなことに、この屋敷には大量の古書があったのである。

その中でも、わたしが好きだったのは三冊の魔導書。

本棚の奥に置かれ、微かに発光していたその魔導書がとても大好きだった。

ところがその三冊の魔導書は、侍女たちには見えないみたいだった。

現代では使われていない、神聖文字で書かれていたその魔導書は、きっとすごい本に違いない!

そう思って、この屋敷にあるわずかな資料と自身の独学で、神聖文字を学んだ。

夢中で魔導書を呼んでいたわたしに声をかけてきたのは、一人の美しい女性だった。


『その魔導書、読めるの?』

「だあれ?」

『はじめまして、私は———』


精霊だと、その人は言った。

ふわふわと宙に浮いているその人は、この世だとは思えないくらい、壊れてしまいそうに儚く不思議な存在だった。


「そうなんだね。初めて見た......」


そう声を漏らしたわたしに、その精霊さんは微笑んだ。

『そうでしょう? 最近は誰も見えてなかったみたいなのよ』

と、優雅に話してくれた精霊さんは、わたしには、どこか悲しそうに見えた。


「あなたも、この魔導書が見えるの?」

『ええ、もちろん』

「じゃあ、この魔導書に書かれていることも分かる?」

『わかるわよ』

「わかるのっ⁉」