『どうしたものかしら。抜け出して魔物ぶっ飛ばしていて、あなたが“氷花の魔女”だと知られてしまったら、大変なことになるわよ』

「そんなことはないよ。大丈夫、気配を消し去る方法も覚えたから!」

『あら、どうやったの?』

「必死に見つからないようにしていたら、自然とこのスキルが身についた。魔法じゃなくって、実力で」

『......ああ、そうなのね』


なぜか遠い目をしてあらぬ方向を見つめている精霊さん。

何かショックなことでもあったみたいだ。

ここは深く追及せずにそばにいてあげるのが友というものだろう。

というか、家族か。

なんて大人な思考回路をしてから、わたしはまた精霊さんに話しかけた。


「ねぇ、エヴァ。名前ってさ、誰につけてもらったの?」

『......何よ、いきなり』

「んんー? なんとなく?」

『......そういうあなたは?』

「へ?」

『名前よ、誰につけてもらったの?』


名前、かぁ......。

誰につけてもらったんだっけ、と頭をひねるも答えは出てこない。

うーん......。


「......わかんない、けど、お母様かお父様だと思うよ?」

『そうなの......』


「まあ、あなたはそうよね」と返してきた精霊さん、もとい、エヴァ。

まあみんなそうだよね、とうなずきつつ、私はエヴァと出会った時のことを思い出していた。