「今までもね、彼女ができたらコーデしてあげるから連れてきなさいって言ってたのよ。でも、そんな機会ずっとなくてね。だから、今回悠介から頼まれて、嬉しくてついたくさん持たせちゃったの」
「こんな素敵な服に袖を通したの初めてなので、少し緊張しますが……本当にありがとうございます。すごく気に入ってます」
笑顔でお礼を言ってから続ける。
「ご姉弟で仲がいいんですね。私、学生の頃、有沢グループのレストランでバイトをさせていただいていたことがあるんですが、そのときに一度、悠介が夏美さんを連れて来店していましたよね。あのときは、美男美女でお似合いだったからてっきり恋人だと思って他のスタッフとバックヤードで騒いでたんですけど」
ふふっと笑いながら話すと、夏美さんは「ああ、あったわね。そんなこと」と言ってから苦笑いをもらした。
「お似合いだなんて言われちゃうってことは、悠介は本当に眼中になかったのね」
「え……あ、でも昔の話ですから。お互いに再会したのがきっかけみたいな感じなので、悠介も当時はそんなつもりはなかったはずですし」
せっかく逸らした話題がまた戻ってきた。
ギクッとしながらも笑顔で返したところで、私の携帯が鳴った。
バイブレーションの震え方から電話だとわかり、バッグから携帯を取り出す。
夏美さんに「すみません」と謝りながら確認した携帯画面には、〝母親〟からの着信だと表示されていて、自然と眉間にシワを寄せていた。



