「それも問題ない。姉が見るのは、内面的と言ってももっと感覚的なものだ」

感覚的……直感とかそういう意味合いだろうか。
愛想はいい方なので、第一印象は悪くはないとは思うのの、そこまでの自信はない。

渋っている私を見ていた有沢は「もし姉がOKを出したら」と付け足した。

「就職先の面倒を見てやってもいい。学生時代、あれだけバイトに精を出していた白川のことだ。さっきの言い方からして、多少なりとも正社員として働きたいという希望はあるんだろ? だったら、俺が就職先を用意してやる」
「えっ、本当……?!」
「ああ。うちの系列会社で探すことを約束する」

有沢の言う通り、贅沢を言えば正社員として働きたいという思いはずっとあった。
でも、二十回以上受けた中途採用の面接は落ちたし、やっぱり履歴書に残る大学中退という文字はいい印象を与えない。

その理由を毎回聞かれ答えるたびにメンタルがゴリゴリ削られていくようで、いつの間にか求人サイトを見る指が動かなくなっていた。

有沢グループの系列会社なら、福利厚生がきちんとしているし、給料だって悪くない上、絶対にホワイト企業だ。
その証拠として、大学生ターゲットの希望就職先アンケートでは毎年上位だし、社会人ターゲットの勤務先満足度アンケートでも毎年トップ争いをしている。

ゆえに競争率が高く、普通だったら四大を出ていない私なんて絶対に入れないけれど、子息である有沢が口利きしてくれると言うのだ。間違いない。

有沢は、性格的には腹立たしい面もあるにしても、嘘をついて騙すような人じゃない。

完全に私が食いついたのがわかったのだろう。
有沢は口の端を上げ満足そうな顔をすると、ゆったりとした動作で組んでいた足を解く。
そして両膝の上にそれぞれ肘を置いて身を乗り出し、私を見た。