契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける



言ってから、しまったと思った。
なにも自ら掘り起こすような真似をしなくても、このまま謝って終わりでよかったのに、と焦りながら続けた。

「あ、でも、半分以上寝ぼけてて話もほとんど入ってきてないから! 名前は聞こえた気がしたけど、なんの話だったのかは本当に見事なほどまったく……」
「俺が柚希を好きだって話をしてた」

見るからに慌てふためいた私がペラペラと口を動かしている途中で遮るように言われた言葉に、時間も心臓もこの世界のすべてがピタッと止まった気がした。

中途半端に開いたままの口を閉じることもできなければ、瞬きすらできずに息を呑む。
悠介はずっと真剣な眼差しで私を見ていて、その瞳に自分の姿が見えた途端、ドキッと胸が跳ね上がりものすごい速さで動き出す。

うるさい心臓に急かされ、やっと呼吸しなきゃと思い出し空気を吸い込んだ。

私、今、告白された……?

盗み聞きしていたときも、もしかしたらという期待はあった。でも、そんなのはきっと私が都合よく捉えただけの勘違いで、違うに決まってるって、そう思っていたから。まさかこんなふうに目を見て真っすぐに告げられるなんて想像もしていなかったし、むしろ告白するのは私の方だと思っていたから……どうすればいいのか、わからない。

好きな人に告白されるなんて初めての経験なだけに、困惑して思わずうつむく。
正座した膝の上で握っている拳をただ見ていると、そこに悠介の手が入り込んできて私の左手を包むからビクッと肩が跳ねた。



~以上、サンプルとなります。~