契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける



「あ、ううん……ごめん。寝ちゃって」

体を起こすと頭がくらっとしたけれど、それ以上に体が痛くて肩をほぐすように動かす。じっとしていないととずっと意識して強張った状態だったからだろう。

とりあえず、狸寝入りだとバレずに乗り切れたことに胸を撫でおろす。でも、そんな私を悠介は不可解そうにじっと見つめた。

「さっきの話、聞いてたのか?」
「えっ……なんで?」

心臓が止まりそうになりながらもなんとか返したのに、悠介はなおも私を見る。
そして、その表情を確信めいたものに変えた。

「柚希の場合、本当に今目が覚めたなら、姉さんが帰ったのかどうかを聞いたあと、失礼なことをしたんじゃないかって心配するだろ。でも、姉さんがいないのをわかってもとくに不思議がる様子を見せない。つまり、どこからかはわからないが起きてたということになる」

私がわかりやすいのか、はたまた悠介の洞察力と推理力が鋭いのか。
見事に言い当てられ背中を冷汗が流れる。

でも、ここまで見抜かれているのに嘘で誤魔化すなんて技は私には使えないので、ソファの上に正座して頭を下げた。

「うん。途中、目が覚めたんだけど、起きるタイミングを逃しちゃって……結果的に盗み聞きしたみたいになってごめん」
「聞かれてまずい話なら、たとえ寝ていたとしても柚希がいる場所ではしないから問題ない」
「でも、なんか私の名前も聞こえたし……」