幸い、悠介は夏美さんの方を見ていて気付かなかったようで会話は続いていた。
何度か続いていたラリーが終わると同時にドアが閉まる音がして、直後にオートロックがかかる。
夏美さんが帰った途端、部屋がやけに静まり返るので悠介の動きがわからずますます起きるタイミングがわからなくなった。
というか……さっきのは、私の話をしていたんだよね?
手放さないだとか、ドレスを選ばせるだとか、主語は全部私で間違っていないよね?
いや、でも、なんでも自分に繋げるなんて自意識過剰だしうぬぼれすぎ?
頭上で交わされる会話の内容に驚きすぎたあまり、体内のアルコールはすでに飛んでいる。だから、しっかり頭も働いているし会話の流れからして私の話をしていたと思うものの……自信が持てないのは、私に都合がよすぎるからだ。
私がそうだったらいいな、と願うあまりに聞いた幻聴か、もしくは今も実は寝ているというオチなんじゃないかという可能性すら考え出したとき、悠介に頭を撫でられる。
大きな手が髪を撫でつけるように優しく触れるので、驚いて咄嗟に目を開いてしまい……まずいと思ったのだけれど、悠介に「ああ、悪い。起こしたか?」と聞かれホッとする。
どうやら自然に目を覚ましたように映ったらしい。



