「いいじゃない。少しくらい。援護射撃だってしてあげてるからプラマイゼロでしょ。っていうか悠介、柚希ちゃんにはあまり捻くれた態度ばかりとってないで素直になりなさいよ。ツンデレなんて、相手に無事気持ちが伝わった上だから可愛いで済んでるけど、気持ちに気付かれもしないまま終わったらただの嫌なやつよ」
ソファの振動と気配で、夏美さんが立ち上がったのだと気付く。
目が開けられないので聴覚に集中しようと意識する。それと同時に、自然な寝息も立てていないといけないので寝たふりも楽じゃない。
身支度を整える衣擦れの音が聞こえたあと、ヒールの足音がドアに向かって離れていくのがわかった。
「一度、目の前から消えたときに死ぬほど後悔したんだ。もう繰り返さない」
悠介は動くつもりはないらしくすぐそこにいるので、私もうかつに身じろぎもできず寝ている振りを続けていた。
「じゃあ、今度は逃がさないように死ぬ気で頑張りなさいよ」
夏美さんの声の聞こえ方からして、もうドア前にいるようだった。
「言われなくてもそうする。もう手放すつもりはないし、親だろうが他の誰にも渡さない」
すぐ隣から聞こえた悠介の声に、なんだかすごい発言をされたような気がしてうっかり目を開いてから慌てて閉じる。
「両想いになったら絶対に挙式披露宴するのよ。うちのブランドから出す初めてのウエディングドレス、もうすぐ完成するからね」
「柚希が気に入ればって話だろ。忖度なしでどこのブランドだとか言わずにデザインで選ばせるから、もし落選しても文句言うなよ」
「余裕よ」



