好きだって言いたい。悠介に気持ちを伝えたい。
私の初恋の症状はとにかくそれに尽きる。
というか、二十四歳の私がこんなにも衝動を抑えるのに苦労しているのに、小学生中学生で初恋を経験した人はどうやって自制していたのだろう。
こんな、ちょっと気を抜いたら暴走しそうな気持ちを秘めつつ学校生活を送れる自信がまったくないので、私の場合は今更でよかったのかもしれない。
同居を始めて約三週間。交換条件とはいえど、悠介は私の事情のためにこの結婚生活を送ってくれて、しかも契約終了後は就職先まで用意してくれるというのに、かたや私はたいした役にも立てずにこんな不純な衝動を抱いて……本当に、どれだけ不誠実なのだろうと恥ずかしくなるばかりだ。
「つまらない男ねー。っていうか、案外臆病なのね。あれだけお膳立てしてあげたのに手のひとつも出さないなんて」
呆れが混じった声が聞こえ、意識がわずかに浮上する。
ひどく頭がぼやけている上、睡魔がぐいぐい内側から引っ張ってくるので確固たる意志を持ち覚醒しないとまたすぐに寝入ってしまいそうだ。
今はちょうど勝つか負けるかの瀬戸際だった。



