「そんなに心配しなくても、私はもう大丈夫だよ。そもそも家族のことではもう落ち込んでいないんだってば。三年も前に自分からいらないって捨ててきたものなんだから、未練なんて少しもない。私はちゃんと前を向いてるよ」
微笑んで見せると、悠介はわずかに目を見開いたあと、ふっと表情を和らげる。
〝子ども扱いはやめろ〟と手を払われるかもしれないとも思ったのに、悠介は私が頭を撫でるのを止めなかった。
「そうだったな。ただ、俺相手に無理して笑顔を作る必要はないって言いたかっただけだ。柚希が笑っていようと落ち込んでいようと、俺はおまえを嫌いにはならない」
それどころか、上機嫌な声を返される。
悠介は、そのまま〝もっと撫でろ〟と言わんばかりに目を閉じた。気分はまるで、とんでもなく高貴な猫に気まぐれで懐かれたようだ。
私は初めて自分自身の母性本能を感じ、可愛いという感情が溢れそうになるのを抑え込むのが大変だった。



