「それ以前に俺が考えていたことは、柚希との関係だ」
「私との、関係……? あ、期間短縮の話? だったら私の方はいつでもいいし、悠介の都合次第で大丈夫だよ。でも、今回の件が決着するまでは籍を入れておいた方がいいのかな」
社長令嬢の彼女が有沢グループの事実無根の誹謗中傷をした件は直接私には関係ないにしても、悠介が既婚者の方が今後、話が有利に運ぶとかあるのだろうか。
だとしたら、告白したいからなんて私のわがままは全然後回しでいい。悠介の役に立つことが一番だ。
そう思い、既婚未婚、はたまたバツイチは、その案件に関係してくるのかなと頭を悩ませていると、不意に悠介が「はー……」とため息をつきソファに仰向けになった。
片膝は伸ばし、もう片方の膝は立てた状態で横になった悠介の顔が私の太もものすぐ横にあって、その近さにドキッとする。
悠介の柔らかい髪先が私のももの外側に触れていた。
初めて見る角度の悠介にどうしたらいいのかわからず、それでも見ていたくて視線が外せない。左半身が緊張からカチコチに固まっていた。
私の手を握ったまま薬指にはまっている指輪をいじる悠介は、視線も指輪に向けたまま口を開く。
「悪い」
「えっ……なにが?」
「血筋がどうのだとか、柚希に言わせるつもりはなかった」
抑えた声に後悔が滲んでいた。
悠介に言われ、そういえば、と思い出す。



