契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける



「でも、悠介が嫌な思いしてたらどうしようって思ったから、そういう事情でよかったよ。嘘でホッとした。……あれ、でもだったら最近何を考えて落ち込んだ顔してたの?」

フェイクニュースだったのなら、ショックは受けていないはずだし、その社長令嬢との件も今回のが決定打となって悠介にとって悪くない着地を迎えるような言い方をしていた。多少の面倒くささはあったにしても、表情を曇らせるようなものではないと思う。

見ている限りの話にはなるけれど、悠介はたぶん、仕事はできると思うしキャパも広い。
そんな悠介がなにを思い悩んで沈んだ顔をしていたのかが不思議で聞いた私に、悠介は少し言いよどんでから渋々といった様子で話し出す。

「今日のことを言っているなら、フェイクニュースの内容についてだ。俺を困らせるために適当に嘘を並べたんだろうが、偶然にも柚希の家の事情と酷似してただろ。だから、あれを柚希が見たら色々嫌な思いが蘇ったりするんじゃないかと心配してただけだ。相手に対して苛立っていたから、不機嫌に見えたのかもしれない」

そこで一度黙った悠介が私をじっと見る。
真面目な眼差しを向けられると、急に恋心が主張し始め心臓が騒がしくなった。

今までは悠介が心配なあまり、恋愛感情なんて忘れて目を見て話したり、自分から手を握ったりしていたのに、悠介を好きな気持ちを思い出した途端に緊張して息が詰まりそうになる。

どうせなら、恋心にはもう少しどこかに引っ込んでいてほしかった。

ドキドキうるさい鼓動が悠介に聞こえてしまいそうでひたすら焦っていたとき、悠介が私の手を握ったりするからもうパニック状態だ。