考えてみれば、俺が惹かれたきっかけは、雄二さんといるときの柚希の素直な笑顔だったかもしれない。

最近の柚希は俺といてもどこかぎこちないし、雄二さんの言うように雰囲気が変わった。
それがなにを表すのかはわからないにしても、もしも雄二さんが柚希を妹としてではなく恋愛対象として見ているのなら……俺の勝ち目はだいぶ薄い気がした。

──まぁ、だとしても今更だ。

「柚希は、きっと雄二さんのそばにいても明るく笑っていられると思います」

そこで一度切ってから、雄二さんを見て続けた。

「だからといって、渡すつもりはないですけど」

柚希がどんなベクトルにしろ、相当な大きさの感情を雄二さんに向けているのは最初から知っている。その上で惹かれ、振り向かせようとしているのだから、可能性がどうだろうが尻込みするつもりもない。

真っすぐに目を合わせ告げた俺に、雄二さんはわずかに目を見開き、それから脱力したように笑った。

「いや、万が一渡されたところで俺におまえの代役は務まらないよ。柚希が姿を消してなんの証拠もないのに三年も探し続けて見つけたんだ。他の男が敵うわけがないだろ。それくらいはいくら鈍感な柚希だってわかってる」
「いや、柚希は……」
「言っただろ。雰囲気が変わったって。しっかり正面から今の柚希を見てみろ」