「ああ。今日は俺の知っていることはすべて話すつもりで来ている。少し長くなるが、大丈夫か?」
「はい。俺もそのつもりで来てますから」
即答した俺に小さく笑った雄二さんは、アルコールを一口飲み、ややしてから口火を切った。
「昔から柚希は高校を卒業したら家を出るって言い張ってたんだ。誰でもあんな家にいたいとは思わないし当然だ。でも、柚希の今後の人生を考えた場合、大学を出ておいた方がいいと思って進学を勧めた。幸い、母親は世間体を異常に気にするし進学を断らないだろうと思った」
「男尊女卑の改善がこれだけ叫ばれてますしね。母親も自らを女性の社会進出のモデルとして見られるような売り込み方をしてきたなら、柚希の大学進学を許さないわけにはいかない」
兄が大学に通っているなら余計だ。
雄二さんは深くうなずいた。
「そういうわけだ。でも……いくら将来有利に運ぶからとはいえ、柚希にさらに四年耐えろと言ったのは今思えば酷だったのかもしれない。それを、今でもずっと後悔してる」
いつも穏やかな横顔に険しさが混じる。
柚希が大学に通い始めてから姿を消すまで、バイト終わりにはいつも俺が送っていた。
当時既に惹かれていた俺からしたら、夜道をひとりで帰らせるのが心配だったからだが、柚希には『用事のついでだ』と誤魔化していた。



