契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける



「久しぶりだな、悠介」
「久しぶりです」

『俺もそこまで頻繁には会っていない』
いつか柚希に言ったのは嘘じゃない。

事務所を他県に構えたこともあり、あまり地元には帰ってきていなかった。思い返してみれば、雄二さんと顔を合わせるのも半年ぶりだとかそれ以上だ。

黒髪短髪で爽やかな見た目は相変わらずで、でも、目尻の笑い皺は深くなった気がする。本人は気にしているらしいが、俺から見たら彼らしくよく似合って見えた。

「同じ酒でいいですか?」
「ああ」

目配せすると、マスターがうなずきウイスキーのボトルを手に取る。
その間に雄二さんは「忘れないうちに渡しておくな」と厚みのあるA4サイズの封筒を差し出した。

「これ、頼まれていたやつな。散り散りになっていても、今でも繋がっているやつも多いから、芋づる式で結構集まった。訴えるとなったときに証拠として使おうと考えたのも数人じゃなかったみたいで、当時の日記や録音データも複数ある。役立ててくれ」

資料を簡単に確認しながら「ありがとうございます」と礼を告げる。
時効は過ぎているから訴訟は無理でも、客商売である以上これが公表されるのはまずいはずだ。今は世論も厳しい。十分役に立ちそうだ。

マスターがグラスを置いたところで、雄二さんがこちらに視線をよこした。

「柚希の家の件、おまえが解決したんだってな。ありがとう」

まるで自分のことのように気持ちのこもった声に聞こえ、ふっと笑みがもれる。雄二さんらしいという思い半分と、呆れ半分だった。

そんな俺の心情を見事に読んだのか、雄二さんは「気持ち的には兄貴みたいなもんなんだよ」と笑う。