逃げ出したくなるほどの熱量がこもった瞳に射抜かれ、息をのむ。
距離の問題だろうか。こんなに近いから、普段は見えない悠介の目の奥に灯る感情まで見えてしまいドキドキするのだろうか。
私を抱き締めたままの腕に力がこもる。
ついさっきまでは私を落ち着かせようとしてくれているのだと感じていたぬくもりが、急に温度を上げた気がした。
それを意識した途端、どうして今まで自分が悠介に抱き締められたままあんなにも普通に会話ができていたのかと不思議になる。
私を映した悠介の瞳がだんだん近づいてくる。それに気付いても動けなかったのは、物理的に無理だからじゃなかった。
悠介に引き寄せられ、拒否しようなんて考え自体浮かばなかった。
ゆっくりと目を閉じ、重なった唇を受け入れる。
心臓はやっぱりうるさかったけれど、悠介とのキスはちっとも嫌じゃなくて、むしろそうするのが当たり前のような気さえした。
ふたりきりの部屋には、館内全体に流れているヒーリングミュージックがかすかに聞こえているだけで、とても静かだった。
数秒間触れていた柔らかい感触が離れていくのを感じ、目を開ける。
初めてのキスにドキドキしながらも、未だ鼻先が触れる距離にいる悠介をチラッと見上げ……どちらともなく、再び唇を合わせた。



