「俺は、柚希が生まれてきたことに感謝してる」
間近から告げられた言葉に、声を失った。
「だから、誰かにおまえが傷つけられたら、それがどれだけ俺にプラスに働こうと〝結果的によかった〟とは思えないし、もしもおまえが俺の前から消えたら見つけ出すまで探し回る。今度は世界中だ」
私が、母親に言った言葉を思い出しているのだろう。
『生まれてきたくなかったなんて……消えてなくなりたいなんて、本当は一度だって思いたくなかったのに』
私が、あんなことを言ったから、気にしてくれたのだ。
直球すぎる優しさが胸に響いて、うっかり涙が溢れそうになるのを堪えて笑顔を浮かべた。
「ありがとう。理想の旦那さんだね」
悠介がここまで言ってくれるのは、私が今、妻だからだとわかっていても、それでも十分だった。
こんなに私に寄り添った優しい言葉をかけてくれる悠介はきっと、誰から見ても素敵な旦那様に決まっている。
そう思い言った私に、悠介は表情ひとつ変えることなく「そうだろ」と答えたあと、私をじっと見つめた。
「期限付きが惜しくなったか?」
「ふふ。そうだね」
笑いながら返す。
探るような眼差しだったものの、流れからいって冗談だと思ったからだったけれど、彼はなぜか少し不貞腐れたように眉を寄せた。
理由がわからずにただ眺めているうちに、悠介の表情がゆっくりと変わり……そして私を見る眼差しも変わる。



