「朝一で、社長室に呼んでくれ。話を本人から聞く。」

「承知しました。
社長、あと一つお耳に入れて頂きたい事が、果穂さんが戸川さんにこんな事を言ったそうです。
貴方と同じ意見を持った人は、たくさんいる筈だって、だから、批判や意見は甘んじて受けるつもりだと。

あと、社長が私を必要としてくれる限り、側に居たいって……。
果穂さんカッコいいっすね!
見た目に反して芯が通ってる。
俺、一気にファンになりました。」

「そうだな…、
果穂の許容力は凄いよ。
人間が出来てないとなかなか出来るものじゃ無い。
 ……お前、果穂に近付くなよ。」
新田にまで牽制してしまう、自分の心の狭さを痛感する。

「社内に報告とか、どうでもいいと思っていたが、果穂にこれ以上害が及ば無いように対応する。
社報に入籍の報告とインタビュー記事を載せる。ホームページにもアップしてくれ。
大々的に発表すれば、下手に手出しは出来ないだろ。」

「承知しました。
社外にも果穂さんの存在を良く思っていない人は少なからずいますよ。
貴方は、自分が思ってる以上にモテますから。」

「……どこか一社だけ、インタビューを受けるから選んでくれ。」

「そうこなくっちゃ、承知しました。
お任せ下さい。」

「新田…、どこかから裏金貰ってるんじゃ無いだろうな?
お前、やたらとメディアに肩持つよな。」

「そんなんじゃ無いですよ。
俺はただ、この会社をもっと大きくしたいんです。
全国チェーンになるくらいの規模に。
その為には社長がもっと表に出て、広告塔になった方が手っ取り早いんですよ。」

「まるで、お前が会社を動かしてるみたいだな。
まぁいい、お前が高みに連れて行ってくれるなら楽しみだ。」

「やめて下さい。
俺はただの秘書なんで、そんな力無いですよ。
貴方の側で働いていれば力量は嫌でも分かります。
全ては社長次第ですよ。

貴方には人を動かす力も、人を惹きつける力も備わっている。
俺は貴方の事をリスペクトしてますから。
一緒に高みの景色を観たいだけです。」

こいつの会社愛と言うか、向上心の固まりみたいな所は、秘書としてなかなかだと思う。