その隙に、市原さんが女性店員からお姉さんを引き離す。



「逃げてっ」



市原さんがお姉さんに言う。



「市原くんっ」



お姉さんは逃げようとせず、
「待ってて!今、駅員さんをっ」
と、辺りを見回す。



その時。



「あはっ」
と、女性店員が何かを見て、笑った。



あたしはゾッとした。



(こんな恐ろしい笑顔が、この世にはあるんだ)



常軌を逸している。

そんな言葉がピッタリな笑顔だった。




(何を見て笑ったの?)



あたしは女性店員のそばに行き、彼女の視線の先を辿る。






そこにあったのは、電光掲示板だった。






(なんで?)



これを見て笑う意味がわからない。



「お姉さんっ、この人、あれを見て笑ってる!」



あたしは電光掲示板を指差し、お姉さんに大声で伝える。



あたしにわからなくても、お姉さんにはわかるかもって思ったから。