「なんかこれ、ヤバいよ」
あたしの背筋に冷たいものが流れていく。
「早いうちに警察に行ったほうがいいよ」
お姉さんもそう思ったのか、市原さんに同じことを伝えている。
「一旦家に戻るよ。ちゃんと準備して、きちんと警察に相談しに行く」
「人通りの多い道を選ぶとか、安心出来る道を通るとか、市原さんの安全を考えたほうがいいよ」
と、あたしはお姉さんに言う。
お姉さんは、
「あの、市原くんの家までついて行ってもいい?」
と、どちらに言うでもなく、うつむいて呟いた。
市原さんはお姉さんに笑顔を見せて、
「大丈夫だよ、オレは平気だから。上条さんのほうが危ない目に遭わないように気をつけてほしいよ」
と、穏やかに言う。
「だけど……、心配だよ。近くまでならいいでしょ?」
お姉さんの声が少し震えている。
あたしも胸騒ぎがする。
市原さんは、
「ありがとう」
と、歩き出した。