透明を編む 【完結】



教室内は同じクラスになった事を喜ぶ人達や、席が前後の人と初々しく話す人達で賑わっている。と思う。

わたしには実際には賑やかな声は聞こえないから本当の所どうなのかはわからないけど、新学期の教室ってガヤガヤ賑やかなのが普通だろう。目に見える光景は、やはり、騒がしい様に見えるし。

そんな教室内を一度見渡しながら黒板に書かれた席順を確認して、廊下から二列目の一番前の席に座る。

小学校の頃から千冬と同じクラスになると大抵わたしはここ席だった。一番廊下側の一番前が「あ」の千冬で、その隣が「い」のわたし。

もしかしたらもう千冬が来ているかも⋯と期待と不安を感じていたわたしは空席の右隣を見て少しホッとした。


千冬が来たらなんて声を掛けよう?

「おはよう」かな「一年間よろしくね」かな。

それとも「同じクラスだね!」かな。

悲しいことに同じクラスに友達がいないわたしは一人、千冬が来た時の事を想像してドキドキしながら心の中で練習をしていた。


有馬千冬。

彼はわたしの幼なじみで、わたしの好きな人だから。