「皇帝のことはきいているかい?」

 しばらくの沈黙の後、クラウスが尋ねてきた。

「ええ、まあ。噂だけですが」

 正直に答えた。

 皇帝に嫁げと命じられただけで、その人となりについては教えてはもらっていない。いずれにせよ、ルーベン王国の国王や官僚たちだって、大国バーデン帝国の皇帝どころか帝国のことだってよく知らないはず。