「美月はそのまま持ってて。俺のだけで大丈夫」

「え、でも、」

「美月に風邪をひかせるわけにはいかないから」



そう言って、ニッと笑う生吹くん。

さっきまでの柔らかい表情とは違う、男らしい凛とした顔つき。



「(カッコイイなぁ……)」



この顔がさっき目の前にあった。
しかもキスする一歩手前。



「ッ!」



思い出すと、ドキンと心臓が跳ねた。
男の人に耐性がない私には、刺激が強すぎたみたい……っ。



「じゃあ、行くね。美月は?」

「わ、私も食べたら教室戻る」



手で顔を扇ぐ私を面白そうに見て笑った生吹くん。

だけど、それも一瞬。

次の瞬間には、真剣な眼差しを私に向けていた。



「分かった、教室に戻るまで気を付けてね。

何かあったら、いつでも俺に電話して」

「うん……?」



教室に戻るだけなのに、何に気を付けるんだろう?そんなことを思っていた。

だけど、生吹くんの言葉は本当だった。