「俺らが歩いているこの道、イチョウ並木なんスよ。今の時期は枯葉がゴロゴロ落ちてる。

一歩歩いただけでも、枯葉を踏む何かしらの音がするんス」

「(あ、確かに)」



言われてから気づく。

今まで気にしたこともなかったけど、足を少しズラすだけでも枯葉が崩れる音がした。



「(真白ちゃんが来た時……そう言えば、一切の音がしなかった)」



無音だった気がする。

私が真白ちゃんをチラリと見ると、腕組みをして小太郎くんを見る彼女の姿。その表情には、一切のブレがなかった。


「小太郎くんが意味わからないことを言ってる」とも「核心を突かれた」とも思っていない、無の表情。


それが逆に、私の不安を煽る。


だけど小太郎くんは容赦なかった。

容赦なく、私と真白ちゃんの「友達関係」にヒビを入れる。



「それに影ッス。後ろから夕日がさしているってことは、俺らの前に影がある。

けど、アンタは一切の影なく急に現れた。気配すら消して。

そんな事、果たして一般人に出来るんスかねぇ?」

「……っ!」



ゴクリと息を呑んだのは私。

今、真横にいる真白ちゃんが急に遠くの存在に思えてきて……。



「(もしかして真白ちゃんて、Luna……?)」



不安に思う私と、今だ無表情の真白ちゃんと視線がぶつかる。



「ま、しろ、ちゃん……?」

「……」



ゾクッ



真白ちゃんが隣にいる方の体温が、少しずつ冷えていく気がした。