やがて美桜は、目を閉じたままおでこをアレンの胸に付けた。

包み込まれるような安心感が、ふわっと美桜の体を温める。

(大丈夫。これできっと頑張れる。この先もずっと)
 
そう自分に言い聞かせると、小さく頷いてから、美桜は両手でそっとアレンの胸を押して離れた。

二人の間にすっと空気が流れ込む。

「じゃあ、またね」
 
そう言ってアレンに背を向けると、そのまま歩き出す。

決して振り返ることなく、美桜は速足で歩き続けた。

搭乗口までたどり着くと、飛行機に乗り込む人はまばらだった。
どうやら絵梨達ももう乗っているらしい。

明るく出迎えてくれるCAさんになんとか笑顔で返し、座席番号を探しながら通路を歩いて行くと、心配そうに身を乗り出してこちらを見ている絵梨と仁に気付く。

「おまたせ。絵梨ちゃん、お買い物出来た?」
 
そう言いながら横に座り、シートベルトを締める。

ん?と絵梨を見ると、絵梨は真顔でじっと美桜を見つめた後、片腕を回して美桜の頭を抱え込んだ。

(絵梨ちゃん?)
 
絵梨は、自分の肩に美桜の顔をもたれさせると、ポンポンと労わるように頭を撫でてくる。

ふっと気が緩んだ美桜は、知らず知らずのうちに目頭が熱くなってくるのを感じた。

(少しだけ。いいよね)
 
絵梨の肩を借りて、美桜は少しだけ泣いた。