「やっぱり会えなかったな…」
「え…?」
「あっ、ごめんなさい。独り言です」
ぽつりとつぶやかれた言葉は、どこか切なく聞こえた。
ここは七夕まつり。
年に1回、織姫さまと彦星さまが会える、唯一の素敵な日だ。
そこに願いを懸けるように誰かに会いたくて彼女は訪れたのかなって、想像を膨らませてみる。
「会いたい人がいるんですか…?」
だから私も便乗して聞いてみたりして。
友達というわけじゃないし、ここを離れたらきっと会うことはない。
これもまた、一期一会。
「…はい。中学生の頃に付き合っていた人で、今はもう別れちゃったんですけど…」
「そうなんだ…」
「わたしが最低なことをしてしまったから…振られて当然なんですけどね。でも、ずっと謝りたくて」
「…その人のこと、まだ好きなんだね」
はい───と、彼女がはっきり答えた瞬間に月の光がお互いの顔を照らしてくれた。



