「おいしい?」
「…うま。ほら、」
「……え、」
差し出された牛串。
満足そうな表情をしながら言われたところで、いろんな暑さにやられてしまいそうな私の思考はストップする。
「な、ナナちゃんが食べたいって言ってたから…私は大丈夫」
「こんな柔らかい牛串、食っとかねえと損する」
「……じ、自分で食べるよ」
「…手、塞がってるだろ」
《盗難や窃盗にお気をつけください》と、何度も響くアナウンス。
並んで腰かけた階段にて、誰にも取られないように花火セットを両手で抱きしめる私。
……に、引こうとしない牛串が目の前。
「い、いただきます……、んっ、おいしい!」
「な、これ優勝」
「柔らかっ!」
ナナちゃんは意外と男らしいところがある。
おやつに冷凍パスタを食べたり、今も牛串を食べたり。
ギャップ、素顔、知らない一面。
ひとつひとつ暴かれてゆくたびに、私の胸はトクントクンと嬉しさだけではない脈を打った。



