私ひとりで行くつもりだったから、地味な私服で向かおうとしていれば、またそこでも「俺だけ浴衣とか恥ずい」とか言ってきて。
気づけばこんな姿に……。
「気をつけてな、ふたりとも」
「楽しんできてね~」
見送られながら玄関を出る。
私と一緒に義弟くんが歩いているわけで、案内するように私の斜め前を歩いてくれているわけで。
下駄だからいつもより小さくなってしまう歩幅に、わざわざスピードを緩めてまで合わせてくれる。
「うわ、やっぱ人すご」
「や、やめる…?」
「…なんで。せっかくおばさんが浴衣着付けてくれたんだし、…責任持てよ」
「せ、責任…。…うん」
責任、持ちます。
なんの責任かは前からよく分からないけど、とりあえず持ちます。
屋台が賑わっている場所に着いた頃、時刻は19時に近づいていて。
遅めの出発だったこともあって、空はもう夕暮れ色だった。
屋台の匂い、電球の光、賑わう人々の笑い声、たくさんの足音。



