もしかしてだけど、今になってボーイッシュ作戦が成功してる…?
「…なに笑ってんだよ。この状況わかってんの?」
「ふふ、なんでもなーい」
くすくす笑うと、むにっと頬をつねられる。
「うひゃっ」なんて間抜けすぎる声。
「…あんたはワンピースのほうが似合ってんだよ」
「…へ…?」
「とりあえず敬礼」
照れ隠しの言葉みたい、なんて言っちゃったら怒られるよね。
だから言われたとおりにピシッとおでこに手を当てた。
なんて私の素直な行動にまたまた驚いている彼は一瞬、くしゃっと表情を歪めては戻す。
「…傘、持ってなかったの」
「え…、持ってたよ…?」
「じゃあなんでこんな濡れてんだよ」
「あ、たぶん…走って、来たから…」
「誰のために?」なんて聞かれたなら、また私は条件反射に「ナナちゃんのために」って答えてしまうだろう。
でもそれは聞かれなくて、すべてを察したように、ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に声音は優しかった。



