教科書やノートをぽいぽいとスクールバッグに詰め込んで、誰よりも最初に教室を飛び出したのは私だった。
廊下は走んなー!と、タモツ先生の声が聞こえてくるけれど残念ながらブレーキはかかりそうになく。
急いで向かった場所は下駄箱───の前に、1年生の教室が並ぶ階。
えっと…、たしか1年C組だったよね…?
「あのっ、ナナっ、…と、十波くんは…!」
「え…?十波くんならとっくに帰りましたけど…」
「そ、そうですか…!ありがとうっ」
昔は雷が怖くて小さな頃はお母さんに抱きしめてもらっていたと。
でも今、彼のお母さんはもういない。
「はっ…、はあ…!」
珍しく走って帰って行ったと、ナナちゃんと同じクラスの女の子は言っていた。
やっぱり怖かったんだよね…?
学校じゃ落ち着くことはできないもんね。
だから走って家に帰ったんでしょ…?
「ナナちゃん……!」
家について階段をかけ上って、ノックすらせずにドアを開けてしまったのは初めてだった。



