「ご、ごめんね十波くん。実は私も今日は自分のしか持ってなくて…。購買に売ってると思うから…買ってもらってもいいかな…?」


「めんどい。どうせ帰ったら返せるし、別にいいだろ」


「ちょっ…!」



“帰ったら”とか言わないでっ!

君が女子生徒と同居してるなんて広まったら、きっとえらい騒ぎだよ…!?



「1コしか持ってないんだってば…!」


「切って。3分の1あげるから」


「それは私のセリフだよ…!クラスの友達にでも頼めばいいでしょ…?」


「あんたにしか頼めない」



うううっ、こーいうときに限ってさあ…。

ズルいよ…。

家では「喋りかけんな」とか言ってきたくせに。



「…ゆら」



はい、とうとう彼はそんなことをつぶやいてしまったので。

「きゃああああ~~~!!」と、女子生徒たちの悲鳴オブ悲鳴。


いま名前呼んだよ?

十波くんって人の名前を覚えられる子だったの?

録音して校内放送したい…!


とまあ、ワケのわからない感想ばかりが飛び交っているのですが。