でもそいつがいちばん嫌いだ───と、冷たく言い放たれる。
私だけは信じてよ。
私は嘘をつかない、約束する。
という言葉は、行動で示そうと思った。
「わ、私のところはね、お父さんがダメダメ人間のダメ男で」
「ギャンブル？酒？」
「…たぶん思いつくところぜんぶ。って言っても物心ついたときにはお母さんと2人だったから、覚えてもいなくて」
「逆にいいんじゃない。…ゆらの父親的な存在は、あのメガネかけてトマト植えてた人」
イケメンは唐突に名前を呼んでくるんだと。
ぜんぜん構えていなかったから、つい思考がぱたりと停止してしまった。
「な、ナナちゃん」
「…なに」
「明日ね、お兄ちゃんができるよ」
「………は？」
またバカなこと考えてんなこいつ…って、ぜったい思ってるだろうけど。
雅、私も自分で思うよ。
どうしてここまでこの子のためにいろいろ考えちゃうんだろうって。
家族になりたいのかな？
仲良くなりたいのかな？
ううん、たぶんいちばんはね。
安心を与えてあげたいんだと思う。
だから、決意は固まった───。
