「雨ってどこか落ち着かない…?とくに夜中とか、静かな部屋で聞く雨の音が好きなんだ」
「…俺は昔、雷が怖かった」
「え、そうなの…?」
「小さいときはよく母さんに抱きしめてもらってたけど、入院してからは───…、…なんでもない」
たとえば、こういうとき。
ぶつかっていた肩も、繋いでいた手も離れちゃったけど。
優しく微笑んで当たり前のように手を伸ばしてあげられるような、そんな存在になりたいって言ったらナナちゃんはどう思うのかな。
「俺、大嫌いな人間が3人いるんだよ」
1階の和室に、仏壇があるよね。
そこに飾られている写真には1人の女性が穏やかな表情で写っている。
私のお母さんは毎日のように仏壇の前に座って、同じくらい穏やかな顔をして何かを伝えるみたいに手を合わせていて。
「そのうちの2人が女」
「だから…女の子のことが嫌いなの…?」
「女って平気で嘘つくからさ、もう信用なんかできない。信じるほうが馬鹿見るだけだし。まあ…残る1人は男だけど」



