でも私が握っているというよりは、ナナちゃんが掴んでいると言ったほうが正しい形だ。
「えっと、あの、そんなに無理しなくて大丈夫だよ…?」
「…消毒してる」
「消毒……?なんの…?」
「他人に触られた奴が神聖な我が家へ入れると思うなよ」
なんか嬉しいかも。
一緒に住んでるとか、我が家とか。
まさかこんなにも彼の口から出るなんて思ってもみなかった。
だってそれって家族じゃないとできない会話だよね…?
「もしかしてナナちゃんって…わりと潔癖症なところがあるのかな!」
「…敬礼」
「あっ、はい…!」
雨のなか、空いているほうの手でビシッと。
……だからどうしてやってから気づくの、私ってば。
「…ふっ」
……え?
わらっ……た…?
気のせいにはしない私の脳内は、しっかりと微笑み付きの思い出として記憶された。
「あ、雨が上がってる!」
そのあとは少し遠回りになる場所にあるコンビニに寄って、おじさんへの湿布だけじゃなく、誰かさんへの冷凍パスタもこっそり購入。
コンビニから出ると、少しずつ小雨に変わっていた雨はピタリと止んでいた。



