スマートフォンを取り出して電話をかけようとしたとき───、
「ひゃっ!」
何者かにパシッと掴まれた腕。
「えっ、え、……えっ、だ、だれ…?」
サングラスにマスク、被ったフード。
どこから現れたのかまったく不明な、それはもう怪しい人物が私の動きを止めてきた。
「おい、離せ。こんな堂々とした不審者が居るか」
すぐに割って入るように不審な存在の腕を掴んだ雅。
けれど相手もなかなか離そうとはしないみたいで、雅はとうとう「ボールで顔面潰されてーの?」と、低めの声で脅す。
「…さわんな。吐き気がする」
そして不審者さんの反撃。
ちょっとちょっと、周りの目を集めちゃってますけど…おふたりさん。
なにこの状況…。
「だったら離せよ。急に掴んできてどーいうつもり?ナンパなら他所でやれって」
すごい…、
普通なら恐怖で怯える場面のはずなのに冷静に対応する雅は、さすがソフトボール部のキャプテンだと思った。



