「弟子にしてください…!」


「この茶番もう飽きたっつの」


「茶番じゃなく!本気のガチのマジなんです…!!」



部活の朝練が終わる頃、グラウンド脇での待ち伏せから始まって。

授業の合間には必ず「お疲れさま」を添えての「弟子にしてください」。


休み時間は20秒起きに繰り返す同じ言葉を、「弟子にしてください」。


そしてお昼休みの今、正々堂々と頭を下げながらの「弟子にしてください」を披露する現在。



「聞けってゆら。人に頼みごとするときってのは、なぜそうしたいかの理由がないとダメだろ。お前はそれが皆無」


「そっ、そうでした…!」


「だからといって弟子にするかは別だけど」



だいたい弟子ってなんだよ───と、吐き捨てながらホットドッグにかぶりついた雅。



「実は…、男の子になりたくて」


「……ねえ、もしかしてそれって女嫌いなウサギのためじゃないよな?」


「あっ、わかる?そうなの…!あのねっ、ナナちゃんはお兄ちゃんが欲しかったみたいで…!
だから、これがいちばん仲良くなれるんじゃないかと……!」


「……大至急だれかツッコミ頼む。ウチじゃ無理だ、手に負えない」