“俺、ちゃんと小山田と話すよ。いろいろありがとう。ゆらが居てくれてよかった。”



その言葉がもらえただけで十分。

その日は交換ノートをぎゅっと抱きしめて、眠った。



「はい、ナナちゃん」


「…はや」


「うん。これだけは先に伝えたくて」



次の日に返事を渡すと、驚いたように受け取ってくれる。


ごめんね佳純ちゃん。
ちょっとだけ私、ズルいかもしれない。

でも私は本当に、ふたりが向き合えるようになれて嬉しいんだ。



「ナナちゃん、もう交換ノートは返さなくていいよ」


「え、なんで」


「これで終わり。ナナちゃんは…ちゃんと自分の気持ちが言える子になったから」



あ、ウザかったかな…。

またお姉ちゃんぶって格好つけちゃった。



「俺まだ、本当に言いたい奴に言えてないんだけど」


「…うん。でも近いうち言うでしょ?」


「…まあ、言うけどさ、」



“私もナナちゃんに出会えてよかった。頑張れナナちゃん!私はこれからもずっと、ナナちゃんの味方です。敬礼!”


あえて“お姉ちゃん”という言葉を使わなかったこと。

あえて“敬礼”という言葉を書いたこと。